新規事業に取り組むとき、またはすでに存在する事業を再考するとき、ビジネスモデルを可視化することは非常に重要です。「ビジネスモデルキャンバス」の登場後、その可視化は広く一般的になりましたが、本当にそれだけが適切なツールでしょうか?
本記事ではグローバルで認知される7つのビジネスモデル可視化ツールをご紹介するとともに、最後には「ビジネスモデルツールファインダー」でツールの選び方をまとめました。
- 1. ビジネスモデルキャンバス (2008年)
- 2. リーンキャンバス (2010年)
- 3. バリュープロポジションキャンバス (2014年)
- 4. ビジネスモデルナビゲーター (2014年)
- 5. ジョブ・トゥ・ビー・ダン・キャンバス (2016年)
- 6. ミッションモデルキャンバス (2016年)
- 7. プラットフォームキャンバス (2019年)
- まとめ:ビジネスモデルツールファインダー
1. ビジネスモデルキャンバス (2008年)
概要
アレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールによって開発されたこのツールは、ビジネスモデルの可視化ツールの中でも最も広く知られています。

主な特徴
- 9つの要素(顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客関係、収益の流れ、主要リソース、主要活動、主要パートナー、コスト構造)でビジネスモデルを表現
- 1枚のキャンバスでビジネス全体を俯瞰できる
- 各要素の関連性が明確
適した使用シーン
- 新規ビジネスの構想段階
- 既存ビジネスの再検討
- チーム内でのビジネスモデルの共有と議論
2. リーンキャンバス (2010年)
概要
アッシュ・マウリャによって開発され、ビジネスモデルキャンバスをスタートアップ向けに最適化したツールです。

主な特徴
- 問題、ソリューション、主要指標、独自の価値提案に焦点
- より簡潔で、スタートアップの不確実性に対応
- 仮説検証のプロセスを重視
適した使用シーン
- スタートアップの初期段階
- ビジネスアイデアの検証
- 迅速な仮説立案と検証が必要な場合
3. バリュープロポジションキャンバス (2014年)
概要
ビジネスモデルキャンバスの作者たちによって開発された、価値提案に特化したツールです。

主な特徴
- 顧客プロフィールと価値マップの2つの部分で構成
- 顧客のニーズと提供する価値のマッチングに焦点
- より詳細な顧客理解を促進
適した使用シーン
- 製品開発の初期段階
- 既存製品の価値提案の再検討
- 顧客中心のビジネス戦略の策定
4. ビジネスモデルナビゲーター (2014年)
概要
オリバー・ガスマンらによって提唱された、55のビジネスモデルパターンを活用するツールです。


主な特徴
- 既存の成功したビジネスモデルパターンを参考に新しいモデルを構築
- 4つの次元(誰に、何を、どのように、なぜ)でビジネスを考察
- 創造的なビジネスモデルのイノベーションを促進
適した使用シーン
- 既存ビジネスの革新
- 新規ビジネスモデルのアイデア出し
- 業界を超えたビジネスモデルの転用
5. ジョブ・トゥ・ビー・ダン・キャンバス (2016年)
概要
クレイトン・クリステンセンのジョブ理論に基づいて開発されたツールです。

主な特徴
- 顧客の「ジョブ」(達成したい進歩)に焦点
- 機能的、感情的、社会的側面からジョブを分析
- 顧客の文脈や障害を考慮
適した使用シーン
- 顧客中心の製品開発
- マーケティング戦略の立案
- 顧客のニーズを深く理解する必要がある場合
6. ミッションモデルキャンバス (2016年)
概要
スティーブ・ブランクによって開発された、非営利組織向けのツールです。

主な特徴
- 社会的影響とミッションに焦点
- 受益者と資源提供者の両方を考慮
- インパクト指標を重視
適した使用シーン
- 非営利組織の戦略立案
- 社会的企業のビジネスモデル構築
- ミッション主導型組織の戦略的アライメント
7. プラットフォームキャンバス (2019年)
概要
マルセル・オールヴァインズによって設計された、プラットフォームビジネス特化型のツールです。

主な特徴
- プラットフォーム参加者(生産者、消費者、パートナー)の役割を明確化
- 価値の交換と相互作用に焦点
- エコシステムの視点を重視
適した使用シーン
- プラットフォームビジネスの設計
- 既存ビジネスのプラットフォーム化検討
- マルチサイドマーケットの戦略立案
まとめ
様々なツールを見てきましたが、結局どのツールを使えばいいかわからないというときは、ビジネスモデルツールファインダーで見つけるのがおすすめです。
ビジネスモデルツールファインダー

ツール選びのポイントは、以下の通りです。
- ビジネスの段階:
スタートアップの新規事業なら「リーンキャンバス」が適しています。 - 改善に注力したいポイント:
既存事業の改善で価値提案に集中したい場合は「バリュープロポジションキャンバス」、顧客のニーズに深く迫りたい場合は「ジョブ・トゥ・ビー・ダン(Job-to-be-done)キャンバス」が有効です。 - ビジネスの性質:
プラットフォームビジネスなら「プラットフォームキャンバス」、非営利組織なら「ミッションモデルキャンバス」がおすすめです。 - ビジネスモデルの探索:
既存事業を元にビジネスモデルのパターンを探索したい場合は「ビジネスモデルナビゲーター」が役立ちます。
組織やチームの経験として初めての試みであったり、特定の注力ポイントがあるわけではなく全体的に俯瞰したい、見直したいという場合は「ビジネスモデルキャンバス」が使いやすいです。
また、ツールはあくまでも思考を整理し、議論を促進するための手段であり、「枠を埋めること」そのものが目的ではありません。一つのツールに固執せず、必要に応じて複数のツールを組み合わせたり、時間の経過とともに異なるツールも使用してみてください。
各要素について深く考え、チームで議論を重ね、実際の顧客や市場からのフィードバックを得ながら、継続的に改善していくというプロセスが成功への道筋となります。


