ビジネスやサービス、プロダクトの文脈でその市場規模のことを指すTAM(Total Addressable Market)と、その関連指標の視覚化方法についてまとめます。
TAM、SAM、SOMとは
TAM(Total Addressable Market)
最も広義の市場規模を示す指標です。自社の製品やサービスが理論上到達可能な市場全体の規模を表します。
例えば、スマートフォンアプリを開発する場合、(地理的・言語的・技術的な考慮をしないなら)世界中のスマートフォンユーザー全体がTAMといえます。
SAM(Serviceable Available Market)
TAMの中で、自社が実際にサービスを提供できる市場規模を示します。
TAMでは無視していた、技術的制約や地理的制約、その他サービスやプロダクト上の制限などを考慮した、より現実的な市場規模です。
先のスマートフォンアプリの例では、自社が対応可能OSや、サービス提供地域の制限を考慮して市場規模がSAMに当たります。
SOM(Serviceable Obtainable Market)
SAMの中で、実際に自社が獲得可能と考える(もしくは獲得を狙う)市場規模を示します。
単純に、Our Share of Market と捉えても差し支えありません。
What portion of the market are you able to reach? でもあります。
競合状況や自社のリソース、マーケティング能力などを考慮した、最も現実的な市場規模の指標です。これは通常、事業計画における短期的な売上目標とも密接に関連します。
例えば、スマートフォンアプリの例では、ゲームアプリ×対応OS×日本市場のSAMにおいて、競合が既に3社ある状態に新規参入する場合、合計4社でマーケットを等分する状態と仮定するなら、SOMはSAMの4分の1という考え方ができます。

ちなみに、日本語では、「タム」「サム」「ソム」とそのまま読んでいる方が多いです。
どんなときに利用される指標か
社内向け、社外向け含めて、大きく3つの場面で利用されることが多いです。
- 事業計画の立案時
- 投資家向けプレゼンテーション
- マーケティング戦略の策定
いずれの場面においても、定量的な数値の根拠は必要となります。
デスクワークベースのリサーチ内容で良しとするか、調査委託・独自調査、データ購入まで踏み込んだ根拠を必要とするか、それは時々の用途によって判断する必要がありそうです。(見極めは結構難しい…)
具体的な可視化方法
TAM(SAM、SOM)の可視化方法はこんなものがあります。
1. 円
最も一般的な方法ではないでしょうか。
最外殻がTAM、その中にSAMとSOMが存在し、市場の包含関係が直感的にわかります。
面積比で市場規模の比率を表現できればより正確さは増しますが、そこまで強く意識しなくてもいいのではないかと思います。SAMを大きく見せたいときはあえて比率を変えたりしますし。

2. 逆ピラミッド(ファネル)
マーケティングの文脈でよく使われるファネル図ですが、TAMでも使えます。
全体の市場(ユーザー)を出発点に、その技術を使えるデバイスを保有している人、特定の国×年齢層などの属性でターゲットを絞っていく考え方も同じです。
円状の図と異なるのは、TAM、SAM、SOMが図上では包含関係で描かれていない点ですが、矢印を足すと絞られているというイメージが伝わりやすくなります。

3. 四角形
包含関係を四角で表した図です。
円や逆ピラミッドの表現とは異なり、縦軸・横軸の境目が可視化されていることが特徴です。
その境目を用いて、対象市場が何によって異なるのか?(例:SAMとTAMの違いは何か?)を同時に説明することがよくあります。
例えば、SAM=現在の自社サービスは日本語対応のみだが、英語対応することでTAMにも手が届く、といったような説明です。

【応用】積み上げ面積グラフ
横軸に時系列が登場するパターンです。
時間の変化とともに、マーケットが積み上がるとどうなるか?という表現ができる点が、積み上げ面積グラフの特徴です。
自社事業、サービスの成長可能性を説明する際によく利用される図ではないでしょうか。

まとめ
TAM、SAM、SOMの可視化表現はシンプルです。
一方で重要なのは、「何をもってTAMと定義しているのか?」という点であり、TAMとは何か?を、個人だけでなく、関係者とも認識を合わせておくことではないかと思います。
TAMは、”Addressable” = 取り組む→ 最大限”手の届く”市場のこと
SAMは、”Available” = 利用できる → 適している → サービスを”使ってもらえる”市場のこと
SOMは、”Obtainable” = 入手できる → ”手にすることのできる”市場のこと
TAM、SAM、SOMは、それぞれを比較し上手に区別することで、ビジネス戦略や共有において分かりやすいコミュニケーションツールの1つです。


