プラットフォームキャンバス|ならではの3要素とビジネス具体例

プラットフォーム企業は、過去数十年で劇的に成長し、主要産業のグローバルな景観を再形成しました。Google、Amazon、Airbnbなどがその例です。これらの企業は、自社で製品やサービスを生産するのではなく、エコシステム内で買い手と売り手を結びつけることで本質的な価値を創造しています。

本記事では、プラットフォームキャンバスにおいて特徴的な3要素に注目することで、プラットフォームビジネスにおいて熟考すべき要素とは何か、について理解を深めていきます。

プラットフォームキャンバスとは

2018年にHult International Business Schoolの教授であるTed Ladd氏によって「プラットフォームキャンバス」というフレームワークが新たに提唱されました。

Ted Ladd氏はプラットフォーム戦略の専門家で、起業家でもあります。このツールは、プラットフォームの12の重要要素(消費者・生産者セグメント、価値提案、インタラクション、ファシリテーションなど)を一枚のキャンバスに可視化します。

12の具体的な要素

  1. 消費者セグメント:顧客グループの属性とニーズ
  2. 生産者セグメント:消費者に価値を提供するユーザーグループの属性
  3. 消費者への価値提案:消費者に提供される製品・サービス
  4. 生産者への価値提案:生産者に提供される価値
  5. インタラクション:消費者と生産者間の価値共創活動
  6. ファシリテーション:プラットフォーム運営者が使用する技術とガバナンス
  7. 消費者の代替品:消費者価値提案と競合する現在および将来の代替品
  8. 生産者の代替品:生産者価値提案と競合する現在および将来の代替品
  9. 刺激:新規参加者の獲得と既存ユーザーのエンゲージメント向上のための施策
  10. 収益化:プラットフォームの収益生成戦略
  11. コストモデル:プラットフォーム運営にかかるコスト
  12. 指標:プラットフォームの進捗状況を追跡する指標

プラットフォームビジネスの課題

プラットフォームビジネスの特徴的な課題には、以下のような点があります。

  • 消費者と生産者の両方のセグメントが必要
  • プラットフォームを介さない直接取引(中間除去)のリスク
  • 適切な収益化戦略の選択

“インタラクション”とは何か

インタラクションは、プラットフォームビジネスモデルの中核を成す要素であり、消費者セグメントと生産者セグメントの間で行われる価値共創活動を指します。

プラットフォームを使えば使うほど、双方にとって価値が生まれるそのプロセスです。

具体例

  1. マッチング
    • 適切な消費者と生産者を結びつける(例:Uberでの乗客とドライバーのマッチング、Airbnbでの宿泊客とホストのマッチング)
  2. 対話
    • 消費者と生産者間のコミュニケーション(例:Facebookでのmessenger機能、楽天でのレビュー・評価システム)
  3. 交換
    • 実際の価値(商品、サービス、情報など)のやり取り(例:Amazonでの商品購入、YouTubeでの動画視聴)

“ファシリテーション”とは何か

ファシリテーションは、プラットフォーム運営者が消費者と生産者の間のインタラクションを促進し、規制するために用いる技術とガバナンスの仕組みを指します。

参加者のインタラクションをサポートする、信頼性、品質、効率性を確保するための様々な仕組みが含まれます。ファシリテーションをうまく設計することで、プラットフォーム全体の価値を高めることができます。

具体例

  1. インタラクションの促進
    • 効率的なマッチングアルゴリズム(例:Uberの乗客とドライバーのマッチング)
    • スムーズな取引プロセス(例:Amazonのワンクリック購入)
    • コミュニケーションツールの提供(例:Airbnbのメッセージング機能)
  2. 信頼の構築
    • 評価・レビューシステム(例:eBayの相互評価)
    • 身元確認プロセス(例:LinkedInの認証バッジ)
    • エスクローサービス(例:Upworkの支払い保護)
  3. 品質管理
    • 参加者の審査(例:Airbnbのホスト審査)
    • コンテンツモデレーション(例:YouTubeの不適切コンテンツフィルタリング)
    • パフォーマンス指標の追跡(例:Uberのドライバー評価システム)
  4. ルール設定と執行
    • 利用規約の策定と定期的な更新
    • 違反行為への対応(例:Amazonの偽造品対策)
    • 公平性の確保(例:Airbnbの差別防止ポリシー)
  5. 価値の最大化
    • パーソナライゼーション(例:Netflixのコンテンツレコメンデーション)
    • 需給バランスの最適化(例:Uberのサージプライシング)
    • クロスセリングの促進(例:Amazonの「よく一緒に購入されている商品」機能)

“刺激”とは何か

プラットフォームビジネスにおける「刺激」は、プラットフォームの成長と活性化を促進するための要素を指します。

主には 1. 新規ユーザーの獲得、2. 既存ユーザーのエンゲージメント向上、という2つの目的を達成するために行われる施策です。

具体例

  1. 新規参加者の獲得のための「刺激」:
    • 無料機能 / トライアル期間の提供
    • 新規ユーザー向けの特別割引や特典
    • 紹介プログラム(既存ユーザーが新規ユーザーを紹介すると両者に特典が付与される)
  2. 既存ユーザーのエンゲージメント向上のための「刺激」:
    • ロイヤルティプログラム
    • 定期的なイベントやユーザー限定オファー
    • パーソナライズされたレコメンデーション
    • ゲーミフィケーション要素(ポイント、バッジ、ランキングなど)
    • コミュニティ機能(フォーラム、ユーザー同士の交流の場)

プラットフォームキャンバスの具体例

Uber

ライドシェアサービスのUberをプラットフォームキャンバスで表現すると以下のようになります。

消費者セグメント(乗客)側のニーズは「1~6名の短~中長期の移動」であり、生産者セグメント(運転手)側のニーズは「簡単でフレキシブルな追加収入の獲得」という点に注目すると、ニーズ設計が細かくなされているということがわかります。

SoundCloud

音楽配信プラットフォーム(動画は無く、本当に音源だけに特化)であるSoundcloudもプラットフォームキャンバスで表現することができます。

アーティスト側は無料で音楽配信を可能とする、かつ、より音楽愛好家が視聴者に集まるプラットフォームを目指して設計されています。

まとめ

プラットフォームキャンバスにおいて特徴的な3要素(インタラクション、ファシリテーション、刺激)についてご紹介しました。

3つの要素は密接に関連していて、ときに重なる部分もあります。例えば「刺激」というのは主にプラットフォーム運営者が実施する施策であり、「インタラクション」はユーザー間で行われる活動。また、インタラクションは継続的に、プラットフォームの中核機能として常に存在する、といった点を意識すると考えやすいのではないかと思います。

2社の具体例からわかるように、特徴を見出す前提としても、セグメントや提供価値を明確にすることは非常に重要ですので、ぜひビジネスモデル全体を見渡しながら考察してみて下さい。

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